安松火
やすまつひ

 静岡県に伝わる火の妖怪。
 ある夏の夜のこと。安松に住んでいた平野という名前の浪人が、下男とともに外出して帰る途中、暑さに我慢できず、道端にあった瓜を盗み食いしました。そのことを他人に知られてはまずいと考えた平野は、口封じのために下男を殺してしまいました。
 平野は下男の母を呼び出し、下男の死体を引き渡しました。母は金火箸をその頭に刺し、川に運びました。そして「もしも悪事を働いて殺されたなら川下へ、悪くないのに殺されたなら川上に流れなさい」と言い、川に死体を投げ入れました。死体は川上に流れていったので、母は「それほどの魂があるなら仇をとれ」と言って去っていきました。
 それ以来、夜になると、村中を盥くらいの大きさをした火が転がっていくようになりました。火はいつも浪人の家の中に入っていって消えました。村の住人たちは下男の霊のために祠をつくりましたが、浪人の家はやがて絶えてしまったそうです。

 


参考文献
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)


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