ヤマコ

 『和漢三才図会』(1712年)や『享和雑記』(1803年)に記されている妖怪。
 元々は中国の妖怪で、『本草綱目』を引いた『和漢三才図会』によれば、ヤマコはカクとも呼ばれるもので、年を経た猿のことだそうです。身体は猿よりも大きくて青黒く、人間のように歩いて、物を盗んだり人間を攫ったりするものだとされ、雄しかいないので人間の女を攫って子供をつくるなどとあります。そして、山人が黒ん坊と呼ぶものを、ヤマコの属だろうか、などと書いています。黒ん坊は飛騨・美濃の山にいる黒い大きな猿で、人間の言葉を話し、人間の心を察するそうです。
 黒ん坊については『享和雑記』にも書かれています。美濃国(岐阜県)の泉除川に、黒ん坊に懐かれた善兵衛という樵がいました。黒ん坊は大きな猿のようなもので、毛は長くて黒く、立って歩くと人間のように見えました。また、人間の言葉が分かり、相手の思考を察知することもできました。よく山仕事を手伝い、そのうち善兵衛の家までやって来るようになりました。あるとき、善兵衛の家の近くに住む女のところへ、幻影のような男性が夜な夜な訪れては、しきりに契ろうとしました。村人たちが見張ることもありましたが、見張りがいると男性は姿を見せなくなり、見張るのを止めた夜になると再び現われました。そこで女は鎌を隠し持って眠りました。すると、その夜も例の男性が来たので、女は鎌で男性を斬りつけました。男性は血を流しながら、慌てて逃げていきました。村人たちが血の跡を辿ると、血は善兵衛の住む家の縁の下を通過し、山へと続いています。それ以来、黒ん坊が姿を現さなくなったので、この事件が黒ん坊によるものだと判明したのでした。黒ん坊とは『本草綱目』に書かれているヤマコの仲間で、美濃・飛騨の山にたくさん棲んでいる、といったことが記されています。

 


参考文献
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)


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