一つ目小僧
ひとつめこぞう

 顔に目が一つだけしかない子供の妖怪。
 『怪談老の杖』に次のような話があります。昔、江戸の四谷に住む小島屋喜右衛門という人が、麻布の武家方に鶉を売りました。相手は「代金が足りないので、屋敷で代金を支払う」と言うので、喜右衛門は屋敷まで鶉を届けに行きました。相手は八畳間に案内すると、喜右衛門をそこで待たせて、鶉を奥に持っていってしまいました。喜右衛門が通された部屋は雨漏りの跡があったり、敷居や鴨居が下がっていたり、襖が破れていたりしました。喜右衛門が煙草を吸いながら、「こんな家だが支払いはできるのだろうか?」などと考えていると、いつしか部屋の中に10歳ほどの小僧がいることに気がつきました。小僧は床の間の掛け軸を巻いて落とし、また巻いて落とす悪戯をしていました。喜右衛門が「悪さをしてはいけない」と注意すると、小僧は振り返って言いました。「黙っていよ」。その小僧の顔には目が一つしかなく、喜右衛門は驚き、悲鳴をあげて転倒してしまいました。屋敷の人は喜右衛門を籠で送り、鶉の代金を届けました。後に屋敷の使いの人から聞いた話によると、屋敷では一年に4、5回、怪しいことが起こるそうで、今春にも殿様の居間に子供が現われて、菓子箪笥にある菓子を食べていたので、奥方が「何者だ」と訊ねると、子供は「黙っていよ」と言って姿を消したとのことでした。そして、20日ほど経つと喜右衛門も回復したそうです。

 


参考文献
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)


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