舟幽霊
ふなゆうれい


『今昔画図続百鬼』晦 「舟幽霊」
鳥山石燕
【江戸時代】

『絵本百物語』三 「船幽霊」
桃山人・文、竹原春泉・画
【江戸時代】

 全国各地の海に伝わる妖怪。「船幽霊」とも書きます。
 夜、船に乗って海上に現われて「柄杓を貸せ」などと言うもので、このとき、言われた通りに柄杓を渡してしまうと、その柄杓で船に水を入れられて、沈められてしまいます。もしこれに遭遇したときは、底の抜けた柄杓を渡せば船を沈められずに済むと伝えられています。海などで死んだ者の霊が、この妖怪になるのだそうです。
 また、地域によっては、舟幽霊は海坊主の類であったり、火の妖怪として伝えられていることもあります。島根県では、青く光る船幽霊が風上に出ることを「モンシが憑く」などと言います。

 鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』(1779)に舟幽霊が描かれ、「西国または北国にても海上の風はげしく浪たかきときは波の上に人のかたちのものおほくあらはれ底なき柄杓にて水を汲事あり これを舟幽霊といふ これはとわたる舟の楫をたえてゆくえもしらぬ魂魄の残りしなるべし」 と記されています。
 また、『絵本百物語』(1841)にも船幽霊が描かれ、「西海にいづるよし 平家一門の死霊のなす所となんいひつたふ」 と記されています。

 

日本各地に伝わる舟幽霊の類
名前 地域
垢取り貸せうぇー(アカトリカセウェー) 宮城県
アヤカシ 山口県、佐賀県
磯幽霊(イソユウレイ) 長崎県
いなだ貸せ(イナダカセ) 福島県
柄長くれ(エナガクレ) 愛媛県
オーバコ 山形県
沖幽霊(オキユウレイ) 福岡県
グセ 長崎県
底幽霊(シキユウレイ) 福岡県、長崎県 など
杓子くれ(シャクシクレ) 京都府
ショウカラビー 香川県
タンゴクレレ 鹿児島県
灘幽霊(ナダユウレイ) 長崎県
ナモウレイ 岩手県
引き亡霊(ヒキモウレン) 三重県
船亡霊(フナモウレン) 和歌山県
舟幽霊、船幽霊(フナユウレイ) 日本各地
フナユーレン 四国
ボーシン 三重県
迷い船(マヨイブネ) 福島県
亡者船(モウジャブネ) 青森県、岩手県 など
亡霊船(モウレイセン) 福島県
亡霊やっさ(モウレンヤッサ) 千葉県
よいよい船(ヨイヨイブネ) 福岡県
ヨバシリ 山口県

 


参考文献
本鳥山石燕 画図百鬼夜行』 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 (国書刊行会)
本竹原春泉 絵本百物語―桃山人夜話―』 多田克己 編、京極夏彦 ほか文 (国書刊行会)
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)


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