沼御前
ぬまごぜん

 福島県に伝わる妖怪。
 昔、沼沢沼の周囲はいつも霧が出ていて、霧ヶ窪とも呼ばれていました。この沼には雄と雌の大蛇が棲みついていて、近づく人を襲いました。
 あるとき、領主の佐原十郎義連が、蛇を退治するために家来を連れて沼に行きました。義連たちが船で沼の真ん中辺りまで行って蛇を罵ると、空が暗くなって雷が鳴り響き、大入道が出現。これは蛇の化身であろうと考え、武器で攻撃しようとしましたが、船が波に揺られてうまくいきません。やがて大きな津波が来て、義連たちは波にさらわれてしまいました。岸に残って見ていた家来たちが慌てていると、沼の中から大蛇が現われました。その蛇の首にしがみついていた義連が刀で蛇を斬ると、蛇は苦しみだし、ついに退治されました。義連は蛇の首を斬って須崎に埋め、後難排除を願って社を建てました。その社は沼御前社と呼ばれるようになりました。
 『老媼茶話』にも沼沢沼の沼御前の話があります。1713年(正徳3年)のこと。朝、猟師の山谷三右衛門が鴨猟のために沼沢沼に行くと、沼の向こうの岸に人影が見えました。それは二丈(6メートル)を越える長い黒髪の、20歳ほどの女でした。三右衛門は前々から、この辺りにいるという沼御前と呼ばれる主の話を聞いていたので、あの女は変化の者だと思い、鉄砲で撃ちました。銃弾は命中し、撃たれた女は水の中に消滅。すると沼の底から雷のような音が鳴り響き、水面が荒れだしました。驚いた三右衛門は急いで逃げ出しましたが、とくに祟りなどはなかったそうです。

 


参考文献
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)


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