野衾
のぶすま


『今昔画図続百鬼』明 「野衾」
鳥山石燕
【江戸時代】

 ムササビを奇怪な動物として妖怪視したもの。
 『本朝世事談綺』に毛美無佐々美という獣の記述があります。これは晩鳥または野衾とも呼ばれるもので、姿は蝙蝠に似ていて、人の松明を消してその火を吹くのだそうです。
 鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』にも野衾が描かれ、「野衾はむささびの事なり 形蝙蝠に似て毛生ひて翅も即肉なり 四の足あれども短く爪長くして木の実をも喰ひ又は火焔をもくへり」 と記されています。

 また、高知県には野襖という妖怪が伝えられています。
 柳田國男の「妖怪名彙」(1938)には「ノブスマ 土佐の幡多郡でいう。前面に壁のように立ち塞がり、上下左右ともに果が無い。腰を下して煙草をのんで居ると消えるという(民俗学三巻五巻)。東京などでいう野衾はむささびか蝙蝠のようなもので、ふわりと来て人の目口を覆うようにいうが、これは一種の節約であった。佐渡ではこれを単にフスマといい、夜中後からとも無く前からとも無く、大きな風呂敷のようなものが来て頭を包んでしまう。如何なる名刀で切っても切れぬが、一度でも鉄漿を染めたことある歯で噛切ればたやすく切れる。それ故に昔は男でも鉄漿をつけて居たものだといい、現に近年まで島では男の歯黒めが見られた(佐渡の昔話)。用心深い話である」 と記されています。

 


参考文献
本妖怪談義』 柳田國男 (修道社)
本鳥山石燕 画図百鬼夜行』 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 (国書刊行会)
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)

関連頁
もののけが湧く書庫
 └ 妖怪名彙 柳田國男 1938〜1939年


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