片輪車
かたわぐるま


『今昔画図続百鬼』晦 「片輪車」
鳥山石燕
【江戸時代】

 江戸時代の怪談本や随筆などに記載されている妖怪。
 『諸国百物語』(1677)巻一「京東洞院かたわ車の事」にある片輪車は、車輪に顔がついた姿の妖怪で、夜になると京都の東洞院通りに出没しました。ある母親が片輪車を見ようとして家の扉から覗いていると、人間の足をくわえた片輪車が現われて、家の前まで来て「子供を見ろ」と言いました。母親が慌てて自分の子供を見にいくと、子供の足が引き千切られていたそうです。
 『諸国里人談』巻三にも似たような話があります。こちらの片輪車は燃える片輪の車に乗った女の妖怪で、寛文のころ近江国(滋賀県)に出没しました。片輪車の姿を見ると凶事が起こると言われていたので、夜になると村の人たちは家から出ないようにしていました。しかしあるとき、村に住む女がその妖怪を見てみようと思い、夜、家の扉から外を覗いていました。すると片輪車が現われて、「子供を見よ」と言いました。女は慌てて子供を捜しましたが、どこを捜しても見つかりませんでした。母親は悲しみ、「罪科は我にこそあれ小車のやるかたわかぬ子をばかくしそ」という歌を扉に貼りました。次の夜、それを見た片輪車は「やさしの人かな、さらば子をかえすなり。我人に見えては所にありがたし」と言って子供を返してくれました。それからは片輪車が出ることはなくなったそうです。
 『譚海』にも、『諸国里人談』の片輪車と同じような話があるそうですが、こちらは舞台が信州(長野県)になっています。

 鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』(1779)にも片輪車の姿が描かれ、「むかし近江国甲賀郡によなよな大路を車のきしる音しけり ある人戸のすき間よりさしのぞき見るうちにねやにありし小児いづかたへゆきしか見えず せんかたなくてかくなん つみとがはわれにこそあれ小車のやるかたわかぬ子をばかくしそ その夜女のこゑにてやさしの人かな さらば子をかへしなりとてなげ入レける そののちは人おそれてあへてみざりしとかや」 と記されています。

 


参考文献
本鳥山石燕 画図百鬼夜行』 高田衛 監修、稲田篤信 田中直日 編 (国書刊行会)
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)
本 『津々浦々「お化け」生息マップ』 宮本幸枝-著、村上健司-監修 (技術評論社)


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