送り犬
おくりいぬ

 長野県や兵庫県に伝わる犬の妖怪。
 長野県では、塩田へ嫁に来た女が送り犬に遭遇した話が伝わっています。女は山中で産気づいて、一人で赤子を出産。夜になり、何匹もの送り犬が集まってきたので、女は恐れながら「おれを食うなら食ってしまってくれ」と言いました。ところが、送り犬は襲いかかってこないどころか、まるで狼から守ってくれているかのようでした。やがて、送り犬の群から2匹が女の亭主の家まで行って、亭主の着物を引っ張り、女のもとへ連れて行きました。亭主は女と赤子を発見。帰宅後、赤飯をつくって送り犬に食べさせたそうです。
 柳田國男の「妖怪名彙」(1938)に「オクリイヌ 又送狼ともいうも同じである。これに関する話は全国に充ち、その種類が三つ四つを出でない。狼に二種あって、旅犬は群を為して恐ろしく、送犬はそれを防衛してくれるというように説くものと、転べば食おうと思って踉いて来るというのとの中間に、幸いに転ばずに家まで帰り着くと、送って貰った御礼に草鞋片足と握飯一つを投げて与えると、飯を喰い草鞋を口にくわえて還って行ったなどという話もある(播磨加東)。転んでも「先ず一服」と休むような掛声をすればそれでも食おうとしない。つまり害意よりも好意の方が、まだ若干は多いように想像せられて居るのである」 と記されています。

 


参考文献
本妖怪談義』 柳田國男 (修道社)
本妖怪事典』 村上健司 (毎日新聞社)
本日本妖怪大事典』 水木しげる 画、村上健司 編著 (角川書店)

関連頁
もののけが湧く書庫
 └ 妖怪名彙 柳田國男 1938〜1939年


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